スターシップの初軌道飛行試験の詳細が明らかに、ハワイに着水か
こんにちは。
今回は、ついにスターシップの軌道飛行試験の詳細が明らかとなりましたのでお伝えしていきたいと思います。
目次
スターシップについて
スターシップは米宇宙企業スペースX社が開発している、月や火星への人類進出、そしてISS、国際宇宙ステーションへの人や物資の輸送、人工衛星の打ち上げ、宇宙ゴミの回収など、様々なことに利用できる大型の再利用宇宙船で、今月その試験機SN15が高度10kmの飛行試験で初めて逆噴射で完全な着陸に成功しました。
FCCに提出された資料から軌道飛行試験の詳細が明らかに
そして今回、アメリカ国内の放送通信事業の規制監督を行う連邦通信委員会(FCC)に提出された資料によりスターシップの軌道飛行試験の詳細が明らかとなりました。
本当にこの資料の通りに試験が行われるかはわかりませんが、資料には打ち上げのタイムラインが詳細に記されており、その通りに飛行試験が行われる可能性は十分高いといえるのではないでしょうか。
スーパーヘビー
スターシップを打ち上げるブースターはSuperHeavy(スーパーヘビー)と呼ばれ、高さは70m、約30基のラプターエンジンが搭載される予定となっています。
まだ一度も飛行試験が行われたことがなく、軌道飛行試験前に低高度150m程度の試験が行われる可能性がありますが、そのスーパーヘビーについても今回の資料で試験の詳細が明かされています。
まず打ち上げが行われるのは現在スターシップの試験が行われているテキサス州ボカチカなのですが、スペースXはここをStarbase(スターベース)と呼んでいて資料でも「Starbase」が使われています。
資料によると、打ち上げ170秒後にスーパーヘビーはスターシップと切り離され、発射台に戻ってくるのではなくメキシコ湾の海上に「着陸」するということです。
「着陸」という言葉が使われているので、着水ではなく海上プラットフォームへの着陸になるのではないかと考えられます。スペースXは2基の海上石油プラットフォームを買取していて、これらが改造されたものが使われるかもしれません。
着水すれば30基近いラプターエンジンを一回の試験で使い捨てすることとなり、これについてはスペースXのXEOであるイーロンマスクも避けたいと明かしていて、初めての軌道飛行試験でも着陸を試みる可能性が高いといえます。
またこの軌道飛行試験に使用されるブースターはすでに組み立てが始まっている試験機BN3になるのではないかといわれています。

スターシップ
資料にはブースターと切り離し後のスターシップについても詳細に書かれいます。
打ち上げ170秒後にスーパーヘビーと切り離されたスターシップはフロリダ海峡間を飛行し続けます。

そしてハワイ州カウアイ島の北西海岸から約100km(〜62マイル)離れた海上に軟着水するということで、おそらく通常の着陸と同じようにフラップによる降下のあと逆噴射により速度を落として海面に着水すると思われます。

この軌道飛行試験に使用されるスターシップはすでに組み立てが始まっている試験機SN20になるのではないかといわれています。
タイムライン
軌道飛行試験のタイムラインも公開されています。
イベント | T+ time (秒) |
リフトオフ | 0 |
MECO(スーパーヘビー燃焼終了) | 169 |
スーパーヘビー分離 | 171 |
SES(スターシップ燃焼開始) | 176 |
スーパーヘビー着陸 | 495 |
SECO(スターシップ燃焼終了) | 521 |
スターシップ着水 | 5420 |
軌道飛行試験を元にさらなる改良が加えられる模様
また資料には「スペースX社は、飛行中に可能な限り多くのデータを収集して、突入力学を定量化し、正確な予測や計算による再現が極めて困難な飛行体制の中で機体に起こることをよりよく理解したいと考えています。このデータは、初飛行後に機体の設計やCONOP(作戦構想)を変更する際の基礎となり、内部シミュレーションで使用するためのより良いモデルを構築します。」とあり、この軌道飛行試験は最終段階ではなく、スターシップおよびスーパーヘビーの開発を行うためのデータ収集が目的であることが分かります。
まとめ
今回の資料により軌道飛行試験の詳細が明らかとなりましたがスペースX公式の発表はまだありませんので、さらに詳細な情報が発信され次第、アップデートしていきたいと思います。今回は以上です!
ソース:Starship Orbital – First Flight FCC Exhibit(https://apps.fcc.gov/els/GetAtt.html?id=273481&x=)